人事のバズワード!「人的資本経営」その概要や実務の現状

こんにちは、AMBヒトラボの藤野です。

人的資本経営。今、経営者と人事部の皆さんの一番のバズワードではないでしょうか。今回は、その概要や情報開示に関する現状などをお伝えしていきます。

人的資本経営とは、グローバル化や産業構造の急激な変化、少子高齢化、人生100年時代の到来、働き方に関する価値観の多様化など、企業を取り巻く環境はどんどん変化しています。そして、変化のスピードも上がっているといってよいでしょう。そのような中で、企業が生き残り、成長を持続するためには、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すこと、このことが一番大切だという考え方です。

「ヒト」の価値を最大化する

私は銀行員として社会人をスタートしました。銀行が企業に融資する際は、その企業の「ヒト」、「モノ」、「カネ」を見るんだ!と当時の上司の融資課長から徹底されました。なかでも「ヒト」が一番大切だと・・・。

その後、90年前後のバブルの時代になり、銀行は「ヒト」はおろか「モノ」すらもまともに見ずに、その企業が持つ「トチ・タテモノ(土地・建物)」だけを見て融資を続けました。その結果のバブル崩壊。今の日本の失われた30年のきっかけ、それは「ヒト」の価値をおろそかにしたことではないか、そう思っています。

また、私が企業の経営をしていた時期、10年以上に渡ってメンターをしていただいていた日本を代表する大経営者の方から、常々

「君はちょっとした事業や資金を残すことはしているが、残さなければいけないのは「ヒト」だよ。一流の経営者というのは「ヒト」を残すものだ。良き「ヒト」さえいれば、経営環境の変化などおそるるに足らずだ。」

と言われていました。

当時の私は、目先のことで精いっぱい。急がば回るなどということをする心の余裕もなく、儲かる儲からないの判断に血道を上げていました。私が経営していた企業はある程度の成長は遂げましたが、中長期的に企業価値を上げ続けられたかといえば、そうではありません。

私自身の話を少しさせていただきましたが、このコラムを読んでいただいている経営者の皆様も、ヒトの大切さを感じられるシーンをご経験されているはずです。できるだけ早くヒトの大切さに気づくこと、そうされた経営者は企業を大きくしておられるんだと思います。あるいは長く続けていらっしゃるんだと思います。

そして、改めてバズワード的に申し上げると、「ヒト」は「資本」。いかにその資本から価値を引き出していくか!経営者の仕事の半分以上は実はここだと思います。

そういうことでいえば、「人的資本経営」という言葉自体は新しいですが、本質は昔から何も変わっていない普遍的な概念ともいえるかもしれません。

人的資本の情報開示の流れ

2020年9月、経済産業省から「持続的な企業価値向上と人的資本に関する研究会」の報告書が公表されました。この報告書は、研究会で座長を務めた一橋大学名誉教授の伊藤邦雄先生にちなみ、通称「人材版伊藤レポート」と呼ばれています。「人材版伊藤レポート」の公表をきっかけに、「人的資本経営」がよりフィーチャーされ、実務的な議論や先進企業における実践が始まりましたが、さらに今年の5月に、実践に向けた具体的事例などを明示した通称「人材版伊藤レポート2.0」も公表され、まさに今バズっているのです。

実務としては、「人的資本経営」の情報開示に向けた機運も高まっています。海外は先行しており、例えば、2018年に国際標準化機構(ISO)が人的資本の情報開示に特化した初の国際規格「ISO 30414」を発表しました。米国では2020年に、米国証券取引委員会(SEC)が上場企業に対し「人的資本の情報開示」の義務化を発表するなど、世界では先行して情報開示の要請が進んでいます。

国内でも2021年6月に、東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コードを変更し、「人的資本に関する記載」が盛り込まれたことは、画期的な変化でした。「ヒト」のことが人事部だけの仕事ではなく、経営の仕事であることが明確にされたのです。改訂版コーポレートガバナンス・コードには、人的資本への投資について、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ具体的に情報を開示するべきであること等が記載されました。さらに、つい先月、経済産業省から人的資本可視化指針(案)が公表され、具体的な開示内容もほぼ固まってきています。

さて今回は、「人的資本経営」の概要や実務の現状を書きましたが、このテーマは、企業経営そのものです。また働き手に取ってもこれまでと大きくパラダイムが変わるタイミングです。とても一回では消化しきれないテーマですので、今後数回に分けてお届けしたいと思います。

以下のいずれも経済産業省のHPに掲載されています。もうお読みの方も多いと思いますが、まだの方はぜひ目を通されることをお勧めします。

<参考URL>

・人材版伊藤レポート

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kigyo_kachi_kojo/pdf/20200930_1.pdf

・人材版伊藤レポート2.0

https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/pdf/report2.0.pdf

・人的資本経営可視化指針(案)

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/sustainable_sx/pdf/007_05_00.pdf

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