リユース企業が「1on1」を取り入れるべき理由~キャリア形成を促進する3ステップ「STEP1.個人がキャリアを描く」~

前回のコラムで「キャリア開発」には3つのステップがあるというお話をさせていただきました。 今回は、その3つのステップのうちの、1つ目をご紹介します。また、その際に活用すべき「1on1」についても、コミュニケーションの内容と流れなど具体的な活用方法についてお話をしていきます。

■個人のキャリアを描くために「1on1を活用する」

1つ目のステップは「個人のキャリアを描く」です。
経営者にとって、社員個人のキャリアを描く時に大切なのは、個人のキャリアと、ご自身が経営されてる会社のコンセプト・ビジョン、目指す方向が合致していることです。そうでないとそもそも個人のキャリアをサポートするというところに至らないと思います。各社員にキャリアを描いてもらう際には、しっかり会社のコンセプト・ビジョンと整合するような形で、キャリアに対する希望を引き出していくことが大切です。

では会社としてどういうかたちでサポートするのかというと、上司と部下で一対一でキャリアについてコミュニケーションを行う「1on1」を活用するということがポイントになります。ここ2〜3年で1on1という言葉もだいぶ定着してきました。

1on1は月に1回やるのか、3カ月に1回やるのかなど、 期間の議論がよくあるのですが、積極的な会社だと毎週30分必ず実施している会社もあります。評価のための面談とか、上司が部下の業績を詰めるとか、あるいは世間話で終えるといった内容の1on1ではなく、実際に社員がやりたいこと、 進みたい方向を共有して、将来こんな風になりたい!といったようなことに照らし合わせた身近な会話を、先進的な会社は頻繁に行っています。

今の採用面接の過程では、自分がその会社に入社したら、「一体どれぐらい成長できるんだろう?」とか「 どういう風にやりたいことが実現できるんだろう?」といったことが、企業を選定する上での重要な基準の一つとなってきています。
人手不足の中で、こうした傾向が大きくなってきていて、社員1人1人が働きやすく、自己実現できる環境や、それを目指せる環境を望む人が増えています。優秀な人であればあるほど、そうした意識が強いでしょう。優秀な人材を採用したければ、そうした環境を先進的に構築し、用意することが必須といえます。優秀な人材の確保は業績向上に直結するので、先進企業がここに力を入れている狙いはまさに「業績」なのです。

■リユース企業は1on1を通じて業績を上げやすい

リユース業界は、比較的専門性の高い職種が多い業界です。真贋判定やプライシング、お客様との交渉・接客、商品の出口戦略など、普通の小売業よりは、専門性の高さが要求されます。社員の皆さんが、「専門性を早く身に着けたい」とか、「数年後に業界でも一流のプロになりたい」と考え、会社も社員の思いをしっかり受け止めて、社員のキャリアを希望通り伸ばしていくことができたら、会社にとっても本人にとって、win-winになるでしょう。

会社としても、1on1を通じて、社員の話をじっくり聞き、「今後キャリアアップの機会がある」「ジョブローテーションがある」「 今の仕事の良さや素晴らしさ」といったことを上司を通じて社員に伝えていくと、社員自身が会社の方向感に沿ったかたちでキャリアを描きやすくなります。
さらに「こういうポジションを担ってほしい」 「こういう風に成長してほしい」など、将来の幹部候補生や専門性の高い人には、できるだけ早く具体的なコミュニケーションを取っていくことも重要です。その人のためにポジションを将来的に用意するという前提で、できるだけ早く経営サイドからの強い働きかけをするということもしっかりやっていった方がいいですね。

個人でキャリアを描くというと、多くの企業が、社員に自発的に「〇〇年後にどうなりたいかを考えてみてください」という風に、個人に任せてしまいがちですが、それは誤りです。正しく会社の情報を与えたり、正しく組織の期待を伝えて、 その上でどう将来像を描くのか、ということを考えてもらわないと、キャリアの方向性が会社と個人でずれてきてしまいます。
「私ってこういうことをやりたいんです」と思いつきに近いかたちで社員にキャリアパスについて発言されてしまうと収拾がつかないことになるんじゃないか。こういう観点で、1on1に取り組まないケースが結構あります。逆に、依然として「社員は会社の言うことを聞いてればいいんだ」といった考え方から抜けきれない企業もまだまだあります。

個人のキャリアを描くという意味は、会社として社員にしっかり情報を与えて、将来のことを踏まえたコミュニケーションをした上で、一緒にキャリアを描いていくことが重要、ということを改めて強調しておきたいです。

■1on1でのコミュニケーションの内容と流れの具体例

1on1をこれから導入する場合、月1回ぐらいの頻度でスタートするのが標準だと思います。社員も初めてとなるため、最初の1~2回は「キャリアとは?キャリアに対する考え方とは?」といった基本的なところをサポートしていくのが良いと思います。

「絶対こういうキャリアを歩みたい」などと自分のキャリアについてすぐに考えが固まらないのが普通です。「人と接したい」のか「人と接するよりはむしろモノを扱いたい」とか「人事や経理といった管理の仕事に興味がある」のかなど、情報を与えながら社員に考えてもらい、徐々に考えを引き出していくことが必要です。
そしてその後、一旦仮でも良いので目指すキャリアの方向性を決めて、決めたキャリアを目指すプロセスをフォローアップしていく中で、本人の考え方も段々シャープになっていくという流れが理想です。
こういう1on1を続けていくと、必ず個人のモチベーションが上がります。離職も減りますし、業績パフォーマンスも上がります。

では1on1で何を話すのか、について考えていきます。

例えば、以下のようなケースを想定してみます。
・入社3年目、接客や真贋がある程度できるスタッフ
・「接客のプロを目指したいです!」というキャリアのすり合わせまで終わっている
・毎月1on1を実施、時間は30分~1時間程度

毎月毎月なので、前回の1on1から今回までを話題にするのが一番です。

「この1か月、接客のプロを目指すために日々の仕事の中でどんなことをしたんですか?」                                   「この1か月で接客のプロというキャリアに関して考え方を深めたり、新しい気づきを得たことはありますか?」                           といった普通の質問をし、できたことや、改善ポイントや、好事例や考えの芽生えといったことを共有します。それをきちんとメモしておき、次回また振り返りをしていきます。このシンプルな繰り返し、これを継続することが1on1の成功パターンだと思います。

きめ細かいコミュニケーションで、社員の気持ちを受けとめ、良いところを伸ばして、やりたいことを少しでも増やしてあげることを継続する。自社は社員のキャリアをしっかり伸ばすスタンスの会社なんですよ、と社員に示すことが個人がキャリアを描く上でのポイントです。

■まとめ

今回は、キャリア形成を促進するための具体的な3ステップのSTEP1.個人がキャリアを描くことについてお話をしました。自社の社員のキャリア形成をよりよく支援できるよう、本記事での情報をぜひお役立てください。

1on1は諸刃の剣といった側面があります。業績の詰め、世間話、継続性のない会話、社員のことを真剣に考えていないと思われる態度などはまったくの逆効果で、1on1をやらない方がましということもあります。
AMBヒトラボでは、マネジメント層の育成や1on1をこれから積極化したいとお考えの企業様、キャリア形成を進めるに当たってどう進めるとよいのかお困りの経営者の皆さま、人事のご担当者さまに、コンサルティングやアドバイスをさせていただいています。

正しく1on1を行うためには、まずは、経営者の皆さま、マネージャーの皆さまが、1on1研修を受けることをお勧めします。それほど時間を割く必要もなく、人的資本形成、キャリア開発、エンゲージメント強化といった今の一連の最重要人事ポイントをわかりやすく理解できるメニューをご用意しています。

採用が難しい、離職が増えている、社員のエンゲージメントを下がっている、社内のマネジメントレベルを上げたい、などのお悩みをお持ちの経営者の皆さま、人事のご担当者さまは、ぜひ私どもまでお気軽にお問合せください。

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<この記事を書いた人>

株式会社AMBヒトラボ
藤野 匡生(ふじの まさお)

大学卒業後、メガバンクへ入社。産業アナリストとして小売・サービス・不動産業の分析や国際金融担当のチーフマーケットエコノミスト、経営企画部にて新会社設立準備及び経営企画に携わる。
その後、不動産ベンチャー企業に入社。経営企画責任者として、2005年に東証第一部に上場を果たす。

その後、ベンチャー企業へのハンズオン投資を行う企業に入社。副社長として、 投資案件の選定・事業育成・売却に至るプロセス全般を統括。投資先であるジュエリー・ブランドのリユース・リフォーム事業を行う企業の代表取締役に就任。日本初ジュエリー・貴金属のアセットマネジメントを行う企業にリモデル。主要百貨店やSCに22店舗を構え、10万人の会員規模に成長させた。ジュエリー資産の活用の啓蒙活動にも尽力。主要経済誌等に発表した論文・講演等多数。

現在も、リユース・ジュエリー業界での企業経営経験、人材採用・育成経験を活かし、複数企業のアドバイザーとして活躍するとともに、当社の取締役として採用支援に従事している。

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